大判例

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東京地方裁判所 昭和40年(手ワ)569号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔争点〕本件手形は金額らん白地で振出され、受取人増沢は金額を五〇〇万円以下の範囲内で補充すべき旨約したにかかわらず増沢は右補充権を乱用して金額らんにほしいままに一、四三六万円と記入したものであり、原告は右事実を知りながら本件手形を取得したのである。かりに右約定を知らなかつたとしても本件手形には金額五〇〇万円以下の場合にのみ貼付されるべき二〇〇円の印紙が貼付されていたのであるから、原告は右約定のあることを容易に知りえたのであり、これを知らなかつたことにつき重大な過失がある、との抗弁にたいし、判決は抗弁後段の場合においても手形取得者に過失は認定できないとしてつぎのとおり説明している。

〔判決理由〕つぎに被告水永は、前記のとおり、金額らんについては訴外松江喜三郎に対し、多くとも金三〇〇万円の限度で補充されるべきことを承認していたに止まるものと認むべきであるから本件手形に「一、四三六万円」と記載されたのは右制限を超過するものといわねばならない。しかして原告が本件手形を訴外増沢亀之助から取得したものであることは当事者間に争いがないところ、被告水永は原告が本件手形を取得するに当り、その金額らんは被告水永の授与した補充権の制限を超過して記載されたことを承知していたか、知らなかつたとしても重大な過失に基くものであると主張するが、さような事実を認めるに足りる証拠はない。もつとも前記のとおり、本件手形には通常金額五〇〇万円以下の場合に貼用すべき二〇〇円の収入印紙が貼用されているけれども、手形を取得する者には貼用印紙の額に特別の注意を払うべき義務があるわけではないから、他に特段の事情の認められない本件では、よしんば原告が右の点を看過したからといつてその一事をもつて重大な過失があつたものと認めるわけにはいかない。

従つて被告水永の抗弁もまた失当であつて採用できない。(佐藤安弘)

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